帰ってきたブログ生活(2nd)

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舞いあがれ!最終回-大好きなドラマが完結した-

小さい頃から夢見た空へついに舞いあがったのを見届けた。
航空会社に就職し旅客機のパイロットになっていたらとても経験できない、現地とリモートで大切な人達に見守られながら志を同じくした仲間たちが開発した空飛ぶ車のパイロットになる。亡き父がずっと夢見ていた「自社で作ったねじが飛行機の一部になって飛ぶ」も意外な形で実現した。回り道もしたけれど全てが今に繋がって、目標が変わっても空に憧れ続ける夢は変わらない岩倉舞の集大成にふさわしい最終回だった。
舞が操縦して空を飛んでいるだけでも泣けてくるのに、航空学校時代のことを思い出しながら右を見て舞が微笑むシーンでさらに胸が熱くなった。町工場の営業として働いたり、独立して会社を立ち上げたけど、航空学校で学んだことはずっと舞の心の底にあったし無駄なことは何もなかったのだ。


主人公の舞が学生時代に仲間たちとひとつの目標に向かって苦楽を共にし青春を謳歌する。見ているこちらも一緒にわくわくするようなシーンがたくさんあったが、私がこのドラマで一番印象に残っているのは航空学校を卒業した矢先のリーマンショックによる不況だ。

舞は人力飛行機パイロットを経験し空を飛びたいからと大学を中退し航空学校在学中に何とか航空会社の内定を得たものの、リーマンショックの影響で入社が半年延長された。
その半年の間に新事業を立ち上げた分の借金が返せず会社の経営危機、一度過労で倒れた父の突然死により社長不在の会社を母と立て直すべく舞はパイロットの夢を断念した。IWAKURAの社長である父の突然死により右も左も分からぬまま社長を継いだ母と、仕事をくださいととにかく頭を下げがむしゃらに営業に行く娘。予期せぬ社長交代と不況で相次ぐリストラに従業員の心はバラバラになった。特に会社にも仕事にも情熱がなさそうな山田さんが放つ舞へ向けた嫌味は聞くだけでも嫌で見るのもつらくなってしまい、あのあたりの週は土曜日に放送される1週間のまとめで見たくらいだ。訪問先でどんな小さい仕事でも構いませんからと何度頭を下げても断られてしまい、顔を上げると窓から飛行機が飛んでいるのが見える演出にこっちも見ていて苦しくなった。
かつては病弱で空を夢見る少女だった舞が順風満帆に内定先の航空会社で旅客機パイロットとして空を飛ぶと誰もが想像しただろう。期待と想像を大きく裏切る展開に視聴者からは非難の声があがった。父と仲間が作ってきた会社を畳んでほしくない、経営難に苦しむ家族を横目に自分の道に進むような人ではない舞がとった選択を「親不孝者」とまで言う人もいた。何が起きるか分からないし悩んでいる時間もなく突然苦渋の選択を強いられる時がくるのが人生だろうに。
今までもちゃんと視聴していたのか、近年急に増えたドラマの粗探しをしては品性のかけらもない変なタグをつけちょっとのいいねで税に浸る陰気でカビ臭い現代社会の悲しき妖怪なのかは分からないが、まるで「就職は?結婚は?子どもは?親の介護は?」と他人のプライベートに根掘り葉掘り首を突っ込んでは文句をつけて嫌われてる近所にいそうな中高年みたいだった。
非難が多かったあの頃の視聴者の声は「ビジネスや収入アップに繋がらない勉強は無駄」とされる現代を強く象徴していると感じた。そう思ってしまうのは私も大学の専攻と直接関係のない仕事に就いているからだろう。

舞いあがれは優しかった。
家族と距離を取っていた悠人を無理やり家に戻すようなことはせず、女たちが家を空け仕事に励むのを拒まなかった。登場人物ひとりひとりを古い枠に押し込まなかった。
頼りない社長夫人だったのに経営を見事に立て直しためぐみさん、船に乗り海のように広く大きな心がみんなの支えだった祥子ばんば、誰に対しても臆せず意思表示のできる久留美、舞に空を飛ぶ夢を語った由良先輩、日本人女性の規範に縛られたくないと奮闘する矢野学生、仕事に情熱を持てるようになり会社に長らく不在だった経理にまで上りつめた山田さん、大好きな人の隣にいたくて一歩も譲らなかった秋月さん…芯が強い女性たちの存在は私を勇気づけた。
妻となり母となりヒロインの子どもに焦点が当たる…といった展開が嫌いな私にとって、女性が夢や仕事を断念することなくありのままでいさせてくれる展開は心地よかった。これを「優しい」で表すのはニュアンスが違うかもしれないが、最終回を終えてまず「面白くて優しいドラマだった」と思わせてくれた。

「また感じの悪い嫌な人が来た」と思っても舞の頑張りと信念を見せつけることで次第に打ち解け共に助け合っていき、優しい顔を引き出す舞ちゃんの人間としての強さが大好きだった。

何かと即効性重視で「無駄」が許されなくなってきた現代において、出会った人の縁を大切にして仲間と経験したこと全てを無駄にすることなく自分の糧にした岩倉舞ちゃんは私たちの翼のような存在でした。

舞ちゃんだけでなく、広い空でそれぞれ星のように生きて輝く登場人物みんなが大好きでした。お疲れ様でした。