帰ってきたブログ生活(2nd)

昔→PMDD闘病記 今→書きたいこと何でも書く雑記ブログ

最近読了した本【オーディションから逃げられない】【家事は大変って気づきましたか?】

暑さのせいか読書がはかどらない日々が続きましたが、久しぶりに読み終えた本たちの感想を書きます。読書から得られる達成感は特別です

オーディションから逃げられない(桂望実)

「あなたらしくいればいい」と世間は謳う。

だけど、他の誰かと比べてしまう――。

渡辺展子はいつも「ついてない」と思っていた。
中学でできた親友は同じ苗字なのに学校一の美女・久美。同じ「渡辺」でも、注目されない方の「渡辺」になった。
絵が好きで美術部に入るが、そこには「一風変わった絵」を描くだけなのになぜか注目も評価も集めてしまう同級生がいる。
就職活動をしてみれば、仲良し四人組の中で自分だけ内定が取れない。
幸せな結婚生活を夢見ていたのに、旦那の会社が倒産する……。
いつも“選ばれなかった”女性の、それでも幸せな一生を描く。

他人と比べながら生きてきた展子が手に入れた、本当の幸せの形とは――。
『オーディションから逃げられない』桂望実 | 幻冬舎 より

23年3月に本書が「じゃないほうの渡辺」として文庫本でリメイク出版された模様。

かなりの大真面目な主人公の展子(のりこ)は大勢の中から選ばれないことに強い劣等感を抱いてたかもしれないけど、運がいいというか人に恵まれている人生だと全体を通して思った。
美人なほうの渡辺こと久美は展子を自分の引き立て役にしたり嫌な態度を取ったりせずに展子のことを大事なひとりの友として接した。授業料のこととか色んな葛藤があったけど反対されることなく進路も希望通りの学校へ進学したし、大人になって展子が多忙と理想に追われたが故の家族や従業員へキツイ言葉をぶつけてしまっても周りは見限らなかった。従業員はどんどん辞めていったけど。

「業績回復のために新商品を提案しろと従業員に迫るけど、自分の振る舞いや自分都合の無意識な顧客軽視が原因だった」ってのは経営者もののストーリーではありがちな展開だけど、展子の場合は自分の代で家業のパン屋を終わらせてはいけないとプレッシャーでいっぱいだったんだよね。まして「人から選ばれる・認められること」に意義を感じて生きてきた展子だから従業員家族にどんどんキツイ言葉をぶつけて、それはおかしいとなだめても聞く耳を持たない様は読んでるこっちも胃が痛い…口を開けば「私が一番忙しくて大変」「何も案を出せないみんなが悪い」だもの…
2号店3号店と店舗数を増やして順調だけど材料費が苦しいから「具材のフルーツの味がしっかりしてるからパンの味が変わったってわからない。安い小麦粉に変えて経費を抑えよう」と先代から続く味を変えたあたりからとても嫌な予感がした。展子!それはダメだ戻ってこい!とヒヤヒヤしちゃった。新商品のパンが軒並みケーキのようにしっかり甘いお菓子系ばかりなのも気になった…塩パンが看板商品だったのに。ベーコンエッグみたいにシンプルな惣菜パンも必要でしょうに。スイーツみたいなパンって最初は目新しくてもすぐに飽きられちゃうんだよ

大勢の中から自分が選ばれるのはそりゃ優越感に浸れて満たされるかもしれないけど、人生長い目でみたら人間関係に恵まれてるほうがよっぽど大事。コンクールとか入学就職面接での「選ばれる」基準って曖昧で筆記テストのように明確に点数で表せないから難しい。たまたま審査員や面接官に気に入られただけなんて対策のしようがない。経営は数字が結果に出るから分かりやすいけど、「どんどん出店して一番利益を出せたけど幸せじゃなかった」って後で振り返ってる。
人生はすべてオーディションと展子は言うけど、その合格基準は一体誰が決めるのか、周りの大事な人たちが「あなたはすごい」と絶賛しても誰かひとりが「お前はダメだ」と不合格にしたら認められないのか。誰のためのオーディションなのか。そう思うとすごく馬鹿らしく感じる。周りの人に支えられて、数字や他人からの評価・他人軸ではなく自分軸で物事を考えられるようになった、人生をやり直せた展子にたくさんの幸せが訪れますように。後味爽やかなハッピーエンドでした。


家事は大変って気づきましたか?(阿古真理)


《村井理子さん、推薦!》
ずっと苦しかった。泣きたい気分だった。
そんな私の気持ちを受け止めてくれた一冊だ。

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──時代が変わっても、家事はラクになっていない!

なぜ家事は女性の仕事だったのか?
明治から令和まで、家事と仕事の両立を目指してきた女性たちの歴史、それぞれの時代の暮らしと流行を豊富な資料で解き明かし、家事に対する人々の意識の変遷を読みとく。

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●メディアが広げた“幸せな”性別役割分担
●「本当は自分でやるべき」に縛られる
●育児をレジャー化する「名ばかりイクメン問題」
●令和の食卓における効率化と趣味化
●一汁一菜ブームが見落とすもの……etc.

家事のモヤモヤをときほぐし、
共働き時代の新しいパートナーシップのかたちを考える。

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亜紀書房 - 家事は大変って気づきましたか? より

コロナ禍で多くの会社が在宅ワークに切り替えたことにより家にいる時間と家事をする時間が増えたころに出版されました。
「ほらね?家事は大変でしょう?なめんなよ?」みたいな説教じみた内容ではなく、色んなデータと家事の歴史からどうして家事はやることが多くて女性がすることと位置づけされてきたかを読みといていく本です。
台所革命の話は初耳でとても新鮮だった。先人の苦労と抗議の声で今の私たちの生活があるんだね。
この手の話題に出てくる「家事をやったのに褒めてもらえるどころか文句を言われるのでやりたくない」男性が個人的にとても無理。ポケモンですら肉体をぶつけ合って戦い新しい技を覚えてレベルアップしていくのに「ぜんぶイチから優しく教えてください。できたら褒めてください」は会社勤めしている大の大人が言うことではないですよ。ポケモンのそだて屋だって料金もらえるのに現実では教える側が無償とは…話をややこしくしました。人間は褒められたいし、リアクションがないとモチベーションが沸かないものだから褒める感謝を口にするのは大事だけど、お互い歩み寄っていきたいね…
この手の主張をする男性のことを「生涯を共にするパートナーのことを自分を保護する母親と勘違いしている」と書いていてとても腑に落ちた。

自分の家のことなのに当事者意識がなくて家事は女の仕事だとふんぞり返ってしまう男性もいれば、家事をしたいのにとにかく時間がたりない男性もいる。共働き専業問わずあらゆる家事が苦手なのに家事は女の仕事を内面化してひとり苦しんでしまう女性もいる。この苦しみの原因は「これだけ経済が落ち込んでるのに未だ高度経済成長期のころの長時間外で働く男性と家のことを全部やる専業主婦が前提のシステムにこだわってるから」だった。
性別関係なく我々は社会の被害者なんですよ。若い世代は怒っていい。
生まれ育った年代の価値観も影響していて育休取得して家事も育児もやって家族と過ごす時間を大切にしたい若い世代と、家のことは全部妻に任せて男は出張転勤に飲み会休日ゴルフとふたつ返事して朝から晩まで働いていればいいバブルを経験している中高年世代の男性の間にある溝がかなり深い。
そういう風潮の中で生きてきたから家事は自分がすることではないし、親からも家事を教わってない男性が多いと思うけど私は「生活に直結する家事を教えてもらえない」のは悲しいことだと思っている。必要ないから教えないでは将来困るのは教わらなかった側だろうに。家事を担う妻に先立たれたり離婚を切り出されたらどうやって身の回りのことをやれるのか。生きながらにして露頭に立たされるわけで。

社会に根付いた男女どちらも苦しめる性別役割からなる視点の他に、従来の家事を違う視点で見ている。私はこの視点がとても響いた。
通路を塞がないように片付ける、家を綺麗に保つ、どこに何があるかを把握する、栄養のあるものを調理して食べる…家事に求められるこれらの行為が結局は自分自身へのケアに繋がると著者は語ります。

料理には思い切りが必要である(…)火にかけた食材は待ったなしであり、どうするかを台所の担い手に迫る(…)最終的には自分で判断しなくてはならないのだ。片付けと同じで決断力が密接にかかわるので、できなかった人ができるようになると人生も選べるようになる。
(ページを控えるのを忘れてしまいました)

料理に関するこの項目はとても説得力がある。もたもたしていれば時間はなくなるし、失敗すれば材料費が無駄になるから料理は気が抜けない。その分思い通りに作れたときの達成感や満足感は大きい。自信にもつながる。決断力が必須な料理が疲れているときに重荷に感じてしまうのは当たり前のことかもしれない。外食中食にはない自炊の強みは自分の健康状態に合わせて味付けや火加減を変えられるところで、料理とは自分への問いかけ、対話なのだ!


分厚くてページ数が多いから読み切るのに苦労したけど、「家事=稼ぎのない人がするもの」とは別の視点を知れて大満足の一冊でした。家事をするすべての人におすすめ。
家事分担の問題はいたずらに夫婦間の対立を煽っても何も改善しない。苦しめる根本の原因を知った上でどうするかを考えないと煽り屋のPV稼ぎで終わってしまう。個人の能力不足に追い込むのはやめよう。