ドラマの中の子役たちと多分同世代だから子どもながら親近感を持っていたのですが、時が経ち大人になってから再放送を見ると自分だけが歳をとっていてドラマの中の人物たちは歳をとらずずっと同じ動かない時間軸を生きているのが見ていて寂しかった。映画で続編をやると知ったときはついに志木那島の時間が動くんだと嬉しくなりました。あの海のすぐそばにある診療所に島の漁師たちが「コトーいるか!!」と叫びながら怪我人を運んで島の人が付き添って、往診から戻ってきたコトー先生が亡きあきおじが作った藁草履を履いて診療所にあがり、患者の顔を見て「大丈夫ですよ~」と昔と変わらず声をかけながら手術室に入っていく。この作品ではいつもの光景なのにみんな目に見えて素敵に歳を重ねていてついに島の時間が動いてみんなが帰ってきたんだ!ってすごく嬉しくてもう涙が出てしまった。そのシーンが島一番の漁師だったタケトシの膝にカジキマグロの上顎が貫通して漁師人生を続けられるかどうかの瀬戸際みたいな重傷だったんですけどね。みんながちゃんと歳を取っていて嬉しいって一体どういう感情なんだ笑
「俺のせいでタケトシさんが…」と泣いている邦ちゃんが朝ドラにも出ていた前田公輝さんに成長していてびっくり。邦ちゃんの続役は無理だったかーと寂しくなったけど、人生色んな道があるもんね。当時邦ちゃんをやっていた子が元気でやっていたらいいな。ひなちゃんも信一も今どうしてるんだろう。本土に行ったのかな。
今までと変わらず自転車で島中を走り往診に向かうコトー先生を最新のカメラ技術で撮っていたのですが、綺麗な景色はもちろんのことあの島ってこんなに広かったんだと16年越しの感動があった。
最後のタイトルから16年も経つとテクノロジーが発展していて、あのころの連絡手段は固定電話や手紙が主流だったのに島民のほとんどがスマホを使ってて、あのシゲさんがipadで本土にいる家族とテレビ通話をしていました。コトー先生だってもう若くはないから電動自転車を使って往診に行ってたし。映画を観る前に和田さんが愛用の昔ながらのカメラではなくスマホ内蔵のカメラで写真を撮るようになっていたら悲しいな…と心配(?)していましたが、あの昔ながらのカメラもちゃんと健在で研修医を記念撮影していたのも嬉しかった。でもスマホもしっかり使いこなしミナちゃんとテレビ通話をしていてすごい幸せそうだった。蒼井優さんの名前あったしあれミナちゃんだよね?DV夫から逃げひとりで志木那島へ来たミナちゃんを救ってたくさんの子どもに囲まれて今まで聞いたこともないようなトーンの声で周りの人に子どもの自慢話をする和田さんが私の中で優勝だった。和田さんいい人だしユーモアがあって好きなんだよね。
テクノロジーの発展の他にも診療所入口にアルコールジェルが置いてあったり、星野家の洗濯物の中に布マスクがあったりいかにもな描写はないにせよ流行りの感染症が志木那島でも蔓延したのが見受けられた。嫌な現実だ。コトー先生大変だったろうな
いつまでも懐かしく嬉しい気持ちではいられず、夢破れた挙句危うく事件に巻き込まれそうになって故郷に帰ってきたタケヒロや、無理がたたって弱っていくコトー先生をいつも通り働かせている島民に対して耳の痛いことをズバズバ言う研修医に目を背けたくてもそこにある現実問題を嫌でも直面させられた。タケヒロも研修医のように実家が太ければ留年してでも卒業できただろうに。中学受験を頑張っていたころを思うととても悔しい。てっきり医者になったタケヒロがコトー先生の後を継ぐストーリーだとばかり思ってたので序盤とはうって変わってハラハラしてしまった。
役者を引退したタケヒロ役の子が帰ってくるのがこの映画の話題のひとつですが、彼と同い年なこともあり直接会ったことも話したこともないけど久しぶりに再会したみたいな気持ちになりました。おかえりなさい。映画を観るまでは大人になったタケヒロの写真は絶対に視界に入れない!と決めた甲斐があった。
期待に応えられなかった申し訳なさでくよくよとモジモジしているタケヒロを「おい行くぞ!」と引っ張っていく邦ちゃんがすごくよかった。キャストは変わってしまったけどあれは邦ちゃんだし邦ちゃんだったら間違いなくそうする。
映画なのでラストはこんな感じに収まるよなーみたいな終わり方だった。終盤がすごくつらくて苦しくなったけど、20年間ひとりで島民全員の命を預かってきたコトー先生なので奇跡を起こしました。かつてドラマで「出て行ってください!僕はふたりとも助けます!」と叫んだ時から変わらない、誰も見捨てず絶対に島のみんなを助ける・命を諦めない。島に医者は自分しかいないから。そりゃ研修医も心を打たれますよ。リアリストで島の医療体制をこんなのいつまでも続くわけがないと批判的だった研修医がコトー先生の背負っていたものを半分持つようになったのが心強かった。人員を増やすのはやはり超基本的な解決策なんだわ。
終わりにタケヒロが研究室のような場所で白衣を着て顕微鏡を覗いていました。どんな勉強をしているのかわからないけど彼が医者とは違う道で医療に携わろうとしているのが嬉しかった。何も人の命を助けるのは外科医だけじゃないからね。頑張れタケヒロ。
時間がようやく動いて志木那島の今が見れて本当によかった。この映画ではじめて主題歌である銀の龍の背に乗ってをフルで聞きましたとさ。